研究概要
センサー情報から「現在」と「未来」を読み解く
IoTデバイスの普及により、気象・宇宙・海洋・インフラ・製造・ヘルスケアなど、さまざまな分野でセンサーデータが収集されています。 センサーデータには、観測対象で「今、何が起きているのか」、そして「次に何が起きようとしているのか」という情報が含まれています。 私たちは、この現在と未来の情報を大規模データからリアルタイムに抽出するセンサー情報処理を研究しています。現在の情報は問題の早期検知に、未来の情報は問題の予防に役立ちます。
センサー時系列の汎用解析 ― 分解・予測・異常検知
センサー情報処理に共通する課題として、時系列分解・時系列予測・異常検知 (用語1) の研究開発を行なっています。 近年では,大規模なストリームデータ (用語2) を超軽量なインメモリ構造である汎用サマリ (用語3) に縮約し、その上で高速な網羅検索を実現する課題に取り組んでいます。 出現頻度の低いパターンは、新規・異常・トレンド変化の兆候と捉えることができます。汎用サマリを用いることで、クラウド–エッジ間の通信遅延が課題となる極地監視・観測の場でも、現在・未来で発生する変動の兆候を リアルタイムに推定できるようになると期待しています。
参考文献
- T. Phungtua-eng and Y. Yamamoto:
Adaptive seasonal-trend decomposition for streaming time series data with transitions and fluctuations in seasonality. Proc of ECML-PKDD (2024) - 山本裕介, 山本泰生: トランザクションデータストリームのサポートクエリに応答する劣線形サマリの構築
知識ベースシステム研究会資料 (2023年) - Yoshitaka Yamamoto, Yasuo Tabei, Koji Iwanuma:
Approximate-closed-itemset mining for streaming data under resource constraint
研究助成
科研費 基盤研究C
(代表) 高速・省メモリな半順序サポートサマリの開発と可用性検証 URL
(代表) 半順序関係に基づくストリームデータの劣線形要約 URL
JST 可能性検証
(代表) ノイズフルな時系列情報から異常発生の予兆を捉えるデータ純化技術の開発 URL
光度曲線の網羅探索による新規パターンの検出
多数の天体の光度曲線を網羅的に探索し、これまでにない変動パターンをリアルタイムに検出します。超小型衛星(Cube-SAT)の光跡検出にも取り組んでいます。 東京大学 木曽観測所の広視野高速カメラ「トモエゴゼン」が生成する1晩あたり約30テラバイトのデータを対象に、宇宙デブリや未知の突発天体の発見を目指しています。
参考文献
- T. Phungtua-eng, N. Arima, Y. Yamamoto:
TriLinear: Time series anomaly detection using tricube smoothing decomposition and a linear forecasting model. Proc of ADMA 2025, LNCS vol. 16198, pp. 19-33 (2026) - T. Phungtua-eng, Y. Yamamoto, and S. Sako:
Elastic data binning for transient pattern analysis in time-domain astrophysics. Proc of SIGSAC'23 (2023)
研究助成
科研費 基盤研究A
(分担) 広視野高頻度測光観測と異常検知による秒スケールで変動する宇宙の探査 URL
作業工程の認識と、AIによる熟練度フィードバック
製造現場の作業を対象に、作業工程のセンシングと工程認識 (Action Segmentation) (用語4) に取り組んでいます。 認識結果をもとに、AIモデルが熟練度を評価してフィードバックする作業教育支援システム FIELDS (Feedback Integrated Expert Level Description System) を開発しました。 AIモデルを介して、作業者自身が現状に気づき主体的に熟練度の向上を図ることを支援する研究です。ヤマハ発動機との共同研究を通して、車体組立を模した作業で有効性を検証しています。
参考文献
研究助成
産学連携
(代表) 静岡大学-ヤマハ発動機産学共同研究講座「スマートファクトリ領域」(2020-2025)
(代表) 熟練技能伝承のための身体動作と触覚を要する技能の定量化に関わる研究 (ヤマハ発動機共同研究)
JST A-STEP
ステージⅠ (代表) 熟練技能のデータ化とAIフィードバックによる技能伝承基盤の構築 URL
スマートデバイスによる行動・バイタルのオンデバイス監視
スマートデバイスの加速度・ジャイロ (IMU) (用語5) や、心拍・皮膚温・PPG などの生体信号を、汎用サマリとして端末上(オンデバイス)に蓄積します。 日常の規則的な行動・バイタルを予測し、そこからの逸脱を検知して、個人の行動フィンガープリントとして活用します。 オンデバイス処理により、通信コスト・プライバシー・端末リソースの課題に対応できるようになります。
参考文献
研究助成
産学連携
(代表) 飲食を伴う社交場における生体反応及び酔い等に関する研究 (サッポロビール共同研究)
用語説明
- 時系列分解・時系列予測・異常検知とは
センサー時系列を扱う3つの基盤課題です。時系列分解は、データを長期的な傾向 (トレンド) や周期的な変動 (季節性) などの成分に分ける処理です。時系列予測は過去の観測から「次に何が起きるか」を推定し、異常検知は「今、通常と異なる何が起きているか」を捉えます。 - ストリームデータとは
観測系から生成され続ける無限長のデータ系列のことです。時間経過とともにデータ総量が急速に増加するため、全データを保持し続けることは難しく、データを「上手に捨てる」ことが重要になります。 - 汎用サマリ (データ要約・Sketching) とは
大規模なデータの出現分布を特徴づける、超軽量な表現です。データをインメモリで保持したままリアルタイム処理ができ、属性条件の組み合わせによる検索から、頻度の低いパターンを新規・異常の兆候として捉えられます。 - 工程認識 (Action Segmentation) とは
映像やセンサーの時系列データを、意味のある一連の動作 (工程) の区間に分割し、それぞれにラベルを付ける技術です。組立作業のような複数工程からなる作業を、どの工程がいつ行われたかという単位で自動的に認識できます。 - IMU (慣性計測装置) とは
加速度センサーとジャイロセンサーを組み合わせ、物体の動き (加速度・角速度) を計測する装置です。スマートウォッチなどのウェアラブル端末に搭載され、人の行動や姿勢の推定に用いられます。
